サッカー観戦は、スタジアムに入った瞬間から始まるわけではありません。
実は、スタジアムの“外”――つまり屋外広場やアプローチ空間が、観戦者の気持ちを高め、応援体験の質を左右しています。
筆者は建築会社に勤務し、空間設計や動線分析を専門としています。
京都サンガF.C.のホーム「サンガスタジアム by KYOCERA」に何度も足を運び、屋外広場の使い方と空間演出が応援文化に与える影響を現地で体感してきました。
この記事では、サンガスタジアムの屋外広場がどのように設計され、どんな使われ方をしているのかを、建築的視点と体験談を交えて解説します。
屋外広場の構造|“広さ”と“つながり”を意識した設計
サンガスタジアムの屋外広場は、亀岡駅からスタジアムへと続くペデストリアンデッキと連動し、観戦者の動線を自然に誘導する構造になっています。
広場はスタジアム正面に広がり、イベント・待機・交流・撮影など多目的に使える設計です。
筆者が注目したのは、広場の床素材と勾配です。
滑りにくい舗装材が使われており、雨天時でも安全に歩ける構造。さらに、微妙な勾配によって水はけが良く、水たまりができにくい工夫がされています。
また、広場の形状は“円弧状”に広がっており、スタジアムの曲線的な外観と調和しています。
これは「建築と都市空間の連携設計」の成果であり、スタジアムが街の一部として機能するように設計されているのです。
空間演出の工夫|紫が染める“応援の余白”
広場には、京都サンガF.C.のチームカラーである紫が随所に使われています。
フラッグ・バナー・案内板・照明演出などが紫で統一されており、スタジアムに入る前から“サンガ空間”に包まれる感覚があります。
筆者が現地で感じたのは、紫の演出が“応援モード”へのスイッチを入れてくれること。かめきたサンガ広場から続く導線が気分を高めてより気持ちを高ぶらせます!
広場に立った瞬間から、「今日はサンガを応援する日だ」と気持ちが切り替わるのです。
また、夜間には紫のライトアップが行われ、スタジアム外観と広場が一体となって幻想的な空間を演出します。
これは「照明による空間演出」の好例であり、ナイトゲームの高揚感を高める仕掛けとして機能しています。
屋外イベントとの連携|“応援前の体験”を設計する
サンガスタジアムの屋外広場では、試合前にさまざまなイベントが開催されます。
フードトラック・グッズ販売・キッズスペース・ステージイベントなどが広場に展開され、観戦者の“応援前の体験”を豊かにしています。
筆者が家族と訪れた際、子どもがキッズスペースで遊びながら「スタジアムに来るのが楽しい」と話していたのが印象的でした。
これは、広場が“家族連れでも安心して過ごせる空間”として機能している証です。
また、イベントの配置は動線を妨げないように工夫されており、混雑を避けながら自然に回遊できる設計になっています。
これは「イベントと動線の融合設計」によるものであり、空間の使い方が非常に合理的です。
建築的視点から見る“広場の役割”とは?
筆者が空間設計の専門家として考える、スタジアムの屋外広場の役割は以下の通りです:
- 観戦者の心理的導入空間として機能する
- 応援文化を視覚的に演出する場となる
- 家族連れ・初心者にも優しい待機空間を提供する
- イベントと連携し、観戦体験の幅を広げる
- スタジアムと都市空間をつなぐ“橋渡し”となる
これらの役割を果たすことで、屋外広場は“応援体験の余白”として機能し、スタジアムの価値を高める空間となるのです。
他スタジアムとの比較|広場の設計が体験を変える
筆者はJリーグの複数スタジアムを訪れていますが、屋外広場の設計によって観戦体験が大きく変わることを実感しています。
例えば、広場が狭くて混雑しやすいスタジアムでは、試合前の高揚感が削がれ、ストレスを感じることがあります。
一方、サンガスタジアムでは、広場が広く、視認性が高く、紫の演出が統一されているため、観戦者の気持ちが自然に高まります。
これは「空間が感情を導く設計」が成功している証です。
また、広場の照明・音響・案内サインが連動しており、初めて訪れる観客でも迷わず行動できる構造になっています。
まとめ|屋外広場は“応援体験の入口”である
サンガスタジアムの屋外広場は、応援体験を支える“入口の設計”です。
広場の広さ・素材・色彩・イベント・照明――それらすべてが、観戦者の気持ちを高め、応援文化を育てる空間として機能しています。
筆者自身も、広場で過ごす時間が「応援の準備運動」になっていることを実感してきました。
これからも、サンガスタジアムが“スタジアム外の設計力”によって、応援体験を広げていくことを願っています。


コメント