サンガスタジアムのスタグルとエコ|一級建築士が見た廃棄問題・地産地消・分別動線の実際

サンガスタジアムのスタグル完全ガイド

かめきたサンガ広場を歩いていると、地元の生産者が並べた野菜や加工品のブースが目に入ります。試合前のあわただしい時間帯なのに、ブースの前で生産者と来場者が話し込んでいる光景が、ここでは珍しくありません。

私は2004年から京都サンガF.C.のゴール裏に通い続けています。かめおかECoマルシェには毎試合立ち寄ってきました。のっそりの牛カツ巻きと焼き鯖寿司を買うためでもありますが、マルシェ全体を歩きながら感じてきたことがあります。スタグル(スタジアムグルメ)は、単なる「試合前のご飯」ではなく、地域と来場者をつなぐ仕組みとして機能している——そういう実感です。

一級建築士として建設現場の管理・検査に携わってきた立場から言うと、この問題はさらに広い文脈で捉えられます。人がどこで立ち止まり、どこで食べ、どこにゴミを捨てるか——それはすべて空間設計の問題でもあります。スタグルの廃棄問題とエコ活動は、動線設計・施設配置・来場者の行動パターンが複合した話です。

この記事では、かめおかECoマルシェで実際に見てきたこと・コンコースの分別ステーションを使って気づいたことを軸に、スタグルの廃棄問題とエコ活動の取り組みを書きます。20年の観戦経験と建築士の視点を組み合わせた、このブログにしかない内容を目指します。

スタグルの廃棄問題——その構造的な原因

需要予測の難しさ——販売側の現実

スタジアムの食品廃棄が難しい最大の理由は、需要予測の不確かさにあります。同じホームゲームでも、天候・対戦相手・試合の重要度・平日か休日か、さらには前節の試合結果まで来場者数に影響します。数万人規模の動員を前提に仕込みをする販売業者にとって、売れ残りをゼロにすることは現実的に不可能に近い。

20年通い続けた経験から言うと、動員が読みにくい試合(平日ナイター・悪天候)は値引きが出やすく、大一番(昇格争い・地元ライバル戦)は完売に近い。廃棄ロスは試合の「空気感」とも連動しています。

ゴール裏特有の「食べ残し」が生まれる理由

ゴール裏での食べ残しには、特有の理由があります。決定機・失点・コーナーキック——試合が動く瞬間、誰も座席に座っていません。食べかけのスタグルは膝の上か、最悪は座席の下に置かれたまま試合が終わります。

これは「食べる気がなかった」のではなく「食べる暇がなかった」という状況です。ゴール裏で試合に全力で参加している人ほど、食事の途中で中断せざるを得ない場面が多い。ある意味「それだけ試合に集中していたエリア」とも言えます。この構造を理解した上で、食べ切れる量を選ぶという発想が重要になります。

使い捨て容器の問題——1試合で発生するゴミの量

プラスチックカップ・発泡スチロール容器・割り箸・ビニール袋——1試合で発生する使い捨て資材の量は、観客数を考えると相当なものになります。こうした課題が重なり合って、スタジアムの廃棄対策は今や「やるかやらないか」ではなく「どうやるか」の段階に入っています。

かめおかECoマルシェが示す「食とエコ」の新しい形

マルシェで見た地元生産者のブース

かめきたサンガ広場で開催されるかめおかECoマルシェは、私が毎試合必ず立ち寄る場所です。のっそりの牛カツ巻きや焼き鯖寿司を買うためでもありますが、各ブースを歩いていると地元の農家や加工業者のブースが並んでいます。

実際に見てきた中で印象に残っているのは、亀岡産の野菜を並べた生産者のブースです。スタジアムに来るサポーターという、農産物に普段それほど意識を向けていない層に、地元の食を直接届けられる場として機能していました。マルシェがなければ接点がなかった生産者と来場者が、試合前のわずかな時間に同じ場所に立っている。この光景が、スタグルを「地域と来場者をつなぐインフラ」として捉える実感の根拠になっています。

「地産地消」がエコにつながる理由

かめおかECoマルシェのスタグルがエコと接続するポイントのひとつは、輸送距離の短さです。亀岡産の野菜・亀岡の料理店のメニュー——地元から来た食材は、遠方から運ばれたものより輸送に伴うCO2排出量が少ない。

さらに、生産者が直接販売することで中間流通が減り、規格外品(見た目は問題ないが市場に出せない野菜)を販売できる機会にもなります。食品ロスの削減という意味でも、マルシェは機能しています。「おいしいから買う」という動機だけで、来場者は自然にエコな消費行動に参加できる。これがマルシェの仕組みとして優れている点です。

のっそり・魚留との関係が示す「顔の見える食」の力

私が毎試合買うのっそりの牛カツ巻き・焼き鯖寿司は、のっそりの店主のご実家が亀岡で営む料理店「魚留」さんのメニューです。

「誰がどこで作ったかがわかる」という透明性は、食品廃棄への意識にも影響します。顔が見える生産者・店主から買った食べ物は、大量生産品と比べて「食べ切ろう」という気持ちが自然に強くなります。エコ活動としての啓発よりも、「誰から買うか」という体験が廃棄を減らす力を持つことがある。コンビニで買ったパンと、目の前で作ってくれた牛カツ巻きでは、食べ残すことへの心理的ハードルが違います。

コンコースのゴミ分別ステーションを建築士として見る

実際に使って気づいた「使いやすさ」と「課題」

サンガスタジアムのコンコースには、ゴミの分別ステーションが設置されています。実際に使ったことがあります。

分別の区分は、燃えるゴミ・プラスチック・缶・ビンといった基本的な分類が設けられています。使ってみて感じたのは、「分別しようという気持ちがある人には使いやすい設計になっている」ということです。ラベルが明確で、投入口の形状で間違いを防ぐ工夫もある。分別を実践した後の小さな達成感も、この体験を印象づけています。

一方で課題も感じます。ハーフタイムや試合終了後の混雑時は、分別ステーションの前に人が集まり、焦って分別なしで近くのゴミ箱に捨てる人が出やすくなります。これは「マナーの問題」ではなく「配置と混雑のタイミングのズレ」という設計課題として捉えるのが正確です。

建築士として見る「分別動線」の原則

分別ステーションの有効性は、設置場所と設置数に大きく左右されます。動線設計の観点で言うと、来場者がゴミを捨てようとする「タイミング」と「場所」に分別ステーションが存在しているかどうかが決定的です。

スタグルを食べ終わった直後、手にゴミを持ったまま歩く人が次にどこへ向かうか——売店付近・トイレ付近・出口付近——この3点が分別行動が起きやすい場所です。逆に言えば、ゴミを持ったまま長距離を歩かせると、途中の普通のゴミ箱に捨てられてしまいます。分別を促したいなら、分別ステーションまでの距離を短くすることが有効です。これはスタジアム設計に限らず、商業施設・公共施設全般に共通する動線計画の考え方です。

「エコ活動に参加した」という体験をどう設計するか

分別ステーションを使ったとき、「ちゃんと分けた」という小さな達成感があります。義務としての分別ではなく、スタジアムという特別な空間の中での行動として、エコ活動が自然に組み込まれている感覚です。

スタジアムが環境配慮の取り組みを届けられる特別な場所である理由は、ここにあると思います。日常生活では「面倒だ」と感じるエコ行動も、好きなクラブを応援するという高揚感の中では自然にできることがある。試合の記憶と「分別した」という記憶が一緒に残ることで、次の試合でも同じ行動をとりやすくなります。

スタグルとエコを両立するために来場者ができること

「食べきれる量」を選ぶ一工夫

ゴール裏に通い続けて学んだのは、スタグルは「食べきれる量」に絞ることが一番だということです。立ちっぱなしで応援しながら食べる状況では、両手がふさがるものは向いていません。片手で持って食べられるもの1〜2品が現実的な上限です。

食べ切れるものを選ぶことは、廃棄ゼロに直結します。特にかめきたサンガ広場のかめおかECoマルシェでは、キックオフ75〜90分前の比較的空いている時間帯に立ち寄ると、ゆっくり選べます。のっそりの牛カツ巻きや焼き鯖寿司のように、片手で食べられて食べ切りやすいサイズのメニューを選ぶのが私のパターンです。

飲み物は入場前に・容器は分別ステーションへ

飲み物については、入場前にコンビニや駅周辺で購入しておくことで、スタジアム内でプラスチックカップを使う機会を減らせます。マイボトルやマイカップを持参するのも有効です。

スタグルを購入した際の容器・割り箸・袋は、コンコースの分別ステーションで分けて捨てましょう。ハーフタイムや試合終了直後は混雑するため、少し時間をずらして向かうと落ち着いて使えます。試合後に10〜15分スタジアムに残ってから退場するのが私のパターンですが、その間に分別ステーションに立ち寄ることができます。

マルシェの生産者に声をかけてみる

かめおかECoマルシェの各ブースのスタッフ・生産者に、気軽に声をかけてみることをおすすめします。「どこで作っているんですか」「この食材の特徴は何ですか」という一言から、亀岡の農業や食文化の話が広がります。

顔が見える関係から生まれる「食べ切ろう」という自然な責任感が、廃棄を減らすことにつながります。エコ活動を「意識的にやろう」と思わなくても、人と食の関係性から生まれる行動変容——これがスタジアムという場でしか生まれない、食とエコの接続の仕方だと思っています。

まとめ|スタグルとエコは「対立」しない

「楽しむこと」と「環境への配慮」は同時に成立する

スタグルを楽しみながら廃棄を減らすことは、我慢や犠牲を伴うものではありません。食べきれる量を選ぶ・顔が見える生産者から買う・分別ステーションを使う——この3つは、むしろ観戦体験の質を上げることにつながります。

かめおかECoマルシェで地元の食と生産者に出会い、スタジアムのコンコースで分別を実践する。20年通い続けてきた私が感じるのは、そういった小さな行動の積み重ねが、スタジアムという場所をより好きにさせてくれるということです。

建築士として思うこと

スタジアムは「人が集まる場所」の設計として、廃棄・分別・動線の問題を最も凝縮した形で抱えています。一方で、多くの人が同じ目的のために集まり、同じ体験を共有するという特性を持つ場所でもあります。

エコ活動が義務ではなく体験として設計された空間では、人は自然にその行動をとります。分別ステーションの配置、マルシェの動線、販売ポイントとゴミ箱の距離——これらの設計の積み重ねが、スタジアム全体の廃棄文化を変えていきます。サポーターとして、建築士として、この課題を「自分ごと」として考え続けていきたいと思っています。

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